涙は眉毛の後ろにある「涙腺」で産生され眼球表面にいきわたります。眼球表面にいきわたった後はまぶたの縁に溜まり、その後鼻腔へ排泄されます。このまぶたの縁に溜まった涙を鼻腔へ流す細い道を「涙道」と言います。
涙が通る道のりのどこかで異常が起きると、涙があふれ出る「流涙」症状が起こります。
名前の通り涙道が閉塞した状態です。詰まる原因などまだ分かっていない事も多いのですが、涙道が閉塞することで行き場を失った涙が逆流し、まぶたからこぼれ出る「流涙」を引き起こします。
流涙により
・目がかすむ
・視界がにじんで見えづらい
・こぼれた涙で目尻が荒れてヒリヒリする。
といった自覚症状が出てきます。
また、それだけでなく、「目ヤニ」が頻繁に出る場合、閉塞した涙道が感染を起こして「涙嚢炎」になります。
涙嚢炎になると腫れ、痛みが強く、治るまで3週間ほどかかります。
涙嚢炎は放っておっくと悪化し、最悪の場合は失明します。
ですから、流涙でお困りの方は、一度受診していただいた方が良いと考えています。
涙道閉塞の治療は、大きく2つに分けられます。
本来の涙道の閉塞を解除し、涙道にチューブを留置する治療法です。
チューブを留置する時のやり方として
- 内視鏡を用いない方法
- 涙道内視鏡のみ用いる方法
- 涙道内視鏡と鼻内視鏡を併用した方法
があります。技術の習得が必要になりますが、安全で確実という理由で、私は涙道内視鏡と鼻内視鏡を併用した方法を採用しております。
しかし、涙管チューブ挿入術は再発のリスクを抱えています。
様々な報告を総合すると、閉塞部位にもよりますが数年後の再閉塞率は10~80%くらいです。
ですから涙管チューブ挿入術を受ける場合は、その次のステップである涙嚢鼻腔吻合術をしっかりとできる医師の手術を受けた方が良いと思います。
b. 涙嚢鼻腔吻合術(Dacryo-Cysto-Rhinostomy:DCR)
涙道閉塞の中でも、頑固な閉塞の場合に用いられる術式です。
本来の涙道を利用することはできないと考え、別のバイパスを鼻腔との間に作成します。
大きく分けると術式は2つ存在します。
皮膚を2cmほど切開し、バイパスを作成する方法です。
皮膚は切らずに、鼻内からバイパスを作成する方法です。
これらを比較すると以下のようになります。
簡潔に述べると、
鼻外法は、どんな方でも手術を受けられるメリットがあります。
反対に皮膚に傷を作るというデメリットがあります。
しかし、傷あとはきれいに縫えばほとんど分かりません。
鼻内法のメリットは皮膚に傷を作らない事、そしてそのため術後の腫れが少ない事が挙げられます。
デメリットは、鼻の中が曲がっている場合など一部の方が鼻内法を受けることができないことです。
というわけで、私は基本的に鼻内法を選択し、どうしても必要な場合に鼻外法を選択しています。