アートメイクの最も優れている点は、もちろん「長持ちする」ところです。
しかし、「プロフェッショナルに施術してもらうので、自分だけではできないメイクができる」というのも見逃せない利点だと私は考えています。
例えばアイライン。
より眼球に近いまぶたの縁に入れた方が、より自然に目もとを強調できます。
しかし、ペンシルなどを使いで自分でまぶたの縁に描くと、どうしても眼球を傷つける可能性があります。
アートメイクであればプロフェッショナルが施術しますので、可能な限りキワまで入れることができます。
しかも、滲みがありません。
この「可能な限りキワまで」ですが、実際はどこまで可能なのでしょうか?
今回は、
こんな流れでお話をさせていただきます。
この模型は、眼科クリニックに置いてある「眼球の模型」です。
眼球は、カメラと同じ構造をしています。
つまり、前の方に「角膜」と「水晶体」というレンズの役割をしている構造物があり、後ろの方に「網膜」というフィルムの役割をしている構造物があります。
そして、眼球でキャッチした情報を「視神経」という通信ケーブルを介して脳に送り、人間はモノを見ているのです。
ご存知の通り眼球はまぶたと接しており、密接な関係にあります。
ということで、次はまぶたの解剖です。
まぶたは、大きく分けると「まぶたを開ける(開瞼)」と「まぶたを閉じる(閉瞼)」の2つの動きをしています。
まぶたを開ける(開瞼)時は、2種類の筋肉(挙筋腱膜とミュラー筋)がまぶたの縁にある瞼板(硬い板)を引っ張り、開瞼しています。
また、まぶたを閉じる時は、上下のまぶたにまたがってバウムクーヘン状に分布する「眼輪筋」が収縮することにより閉瞼します。
バウムクーヘン状に分布している眼輪筋の中心部に向かって収縮し、上下のまぶたが近づくことで閉瞼しています。
まぶたは1日あたり2万回まばたきをしています。
なぜまばたきをするのでしょうか?
まばたきの役割はいくつかありますが、今回は「ワイパーの役割」についてお話しさせていただきます。
涙は眉毛の後ろに存在する「涙腺」により産生されています。
産生された涙はまぶたの縁(瞼縁)に一度たまった後、まばたきにより眼球の表面(眼表面)に分布します。
そして、これを断面図で見ると↓のようになります。
涙が塗り付けられることにより、レンズの役割をしている角膜が傷ついてデコボコしていても涙のコーティングでレンズの表面がきれいになり、きれいな映像が網膜まで届くようになります。
つまり、涙が安定して角膜をコーティングしてくれるのは、視機能にとって非常に重要なのです。
マイボーム腺は、瞼板の中にある油(マイバム)を産生する工場です
この油がマイボーム腺開口部から分泌され、涙液層をコーティングすることで涙液が蒸発する、いわゆるドライアイを予防しています(フォトフェイシャル®でドライアイ治療を参照ください)。
安定している涙液は、まばたきをした後に10秒以上眼表面に均一に塗りつけられています。
もし、アイラインアートメイクを施術した際にマイボーム腺開口部が傷つくと、マイボーム腺開口部から油が分泌されづらくなります。
そうすると、油層が不十分になり涙液が安定しなくなる、いわゆるドライアイになる可能性があります。
ドライアイがひどくなると眼球が傷つき、痛みを感じるようになります。
しかし、理論上は開口部さえ傷つけなければ、ドライアイにはならないはずです。
実際に開口部さえ傷つけなければドライアイにはならないのか、これを今後検証していきたいと思っています。